2.院内の報告制度の充実
本事業における「警鐘事例」では、病院から報告された事故等の概要、要因、改善策を基に、分析に必要なレポートの記述方法や分析する上での視点について、専門家や評価委員会のコメントを付記し、還元してきた。こうしたレポートの中には、事故の発生状況を把握するための情報が不足している、要因や改善策の記載がない、改善策が当該職員への注意喚起でとどまっているというような内容のものもあり、担当者がレポートの集計や分析作業を行うに当たり、苦慮している様子が伺える。
各病院は、こうした報告制度を充実、活用することで、院内の医療事故につながる可能性のある問題点を把握し、病床の種別や規模、提供する医療内容など、病院の特徴を踏まえた効果的な対策に組織横断的に取り組んでいく必要がある。
例えば、インシデントレポートは、将来のアクシデントの芽を摘むための宝の山である。これは、数が集まれば集まるほど、発生の傾向や院内の類似事例の有無を把握することができ、それによって体系的かつ詳細な分析が可能となる。また、「人間はエラーを犯す」という前提に立てば、院内のあらゆる部署や職種を問わず、日常的にエラーは発生していることになる。院内の全職種・各部署からの報告があるか、病院の規模に相応した報告件数があるかといった点は、報告制度が機能しているかどうかの一つの指標になる。
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