警鐘事例  
 
  事例
 No.053
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 誤薬(投与速度調節ミス)
 
 
病院から報告された事故の概要
  24時間持続で高カロリー輸液を施行している患者。指示された滴下時間を実施するため、看護師Aが20滴/分(成人用セット)で開始したが、指示よりも速く薬液が注入された。(指示された時間は1本12時間、滴下した時間は1本2時間20分)滴下調節は、看護師が行っている。医師に報告後、血糖値チェックの指示が出され、高血糖が確認されたので、インスリンを投与した。  
     
要因
 

1. 患者はほぼベッド上にいて体位もほとんど右側臥位で経過しているが、首の位置で点滴滴下速度が変わってしまうことがある。そのため、点滴が医師の指示した速度よりも速く滴下してしまった。
2. 輸液ポンプ等を使用していない。
3. 輸液セットは成人用のものを使用している。
4. 点滴を開始後、滴下速度や滴下量を看護師がチェックしていなかった。

 
     
病院で実施した改善策
 

1. 看護師は滴下の調節を確実に行えるよう、時間を決めてチェックする。
2. 担当看護師以外の看護師も、訪室の際は、滴下速度をチェックする。
3. 輸液セットを小児用に変更し、急速な落下が発生しないようにする。

 
     
評価委員会からのコメント
  輸液療法は指示された患者、指示の薬剤・速度・量・時間を正確に与薬することが重要です。正確に実施するためには、調節に適した輸液セットの選択や輸液ポンプの使用を検討すべきです。24時間持続の高カロリー輸液は血中濃度の急激な変化を避けるために、輸液ポンプの使用を原則とすべきでしょう。やむを得ない時は成人用もしくは小児用点滴セットによる滴下調節を選択せざるを得ませんがこれらの場合は患者の体位やラインの状態により滴下状態に変化が見られることは避けられないので流入速度を常時監視する必要があります。輸液パックに予定量の目盛りをふるなどしてすぐに実施量が分かるように工夫することが必要です。

 
 
 

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