警鐘事例  
 
  事例
 No.006
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 誤薬(薬間違い)
 
 
病院から報告された事故の概要
  患者Aの臨時処方箋が医師の手書きであったため読めなかった。薬剤師が「読めないがおそらくセロクエルではないか、医師は?」と言ったところ、看護師が電話で医師に「読めないですが、セロクエルでしょうか」と問い合わせた。医師からセロクエルとの回答があり、薬剤科ではセロクエル3T3_を調剤し、投与した。
3日後医師が患者Bにセロクラール(20)3T3_を処方した処方箋をもって来たため、薬剤科では在庫がないと返答したところ、「おかしい、この前出した。」と医師が言った事から患者Aのセロクエルがセロクラールの間違いであったことに気づいた。
医師が患者へ処方変更の旨説明し、処方内容を調剤し直した。
 
     
要因
  1.医師の書いた文字が判別不能なほど読みにくいこと
2.処方内容の疑義照会を薬剤師が行わなかったこと。
3.診断名と薬剤の適応に乖離があった場合のフィードバックがかかっていないこと。
4.患者に処方内容や薬剤の適応などの情報が提供されていないこと。
5.間違いやすい薬剤名のリストを病院が作成していないこと。
 
     
病院で実施した改善策
  委員会にて検討の結果および対策
1. 処方箋の記載はわかりやすく書く。
2. 不明の問い合わせは薬剤師が行う。錠剤の単位も聞く。
3. 電話での問い合わせは復唱する。電話の問い合わせは確認しても違っている場合がある。
 
     
評価委員会からのコメント
  本事例は表面的には処方の誤りでありますが、その背景としては、医師の悪筆、薬剤師以外の職種が疑義照会をしたこと、調剤者など第三者によるエラー防止のフィードバックがかからなかったこと、患者への情報提供の不足が要因であると考えられます。
さらに、疑義照会をしたのに誤りに気づかなかったことに問題があります。また疑義照会に対して医師が「セロクエル」と答えた訳ですから、医師に思い違いがあったと言えます。思い違いがあったとき、思い違いから生じるエラーを防止するシステムが病院で機能していないことも問題です。

● 医師の悪筆の問題
医師が読みやすい文字を書くようにすることは言うまでもありません。読みにくい文字の疑義照会は、処方箋そのものを医師に見せて書き直してもらうのが理想です。医師の自覚も高まるでしょう。しかし時間的にゆとりがない場合には、カルテとの照合を行う、病名と薬を確認するなどにより確実な方法で確かめられるように院内でのマニュアル整備をすることが必要です。

● 疑義照会でエラーが防止できなかった問題
今回のケースは、薬剤師の疑問に対して、看護師が疑義照会をしています。本来、処方に関する疑義照会は薬剤師が直接すべきです。薬剤師は、院内で採用している、似たような名前の薬を把握しているので薬剤師が照会した方が事故を防ぐ可能性が高くなります。
しかし薬剤師の知識や記憶だけに依存するシステムは安全なシステムとはいえません。オーダリングと連携したピッキングマシンか疑義照会の支援システムの導入が有効と考えられます。少なくともカルテ上の診断名と薬剤名が常識的に適合しているかどうかを薬剤師がチェックできる方法を病院で検討すべきです。

● 思い違いの問題
薬局では調剤した薬剤を、別の職員の目でダブルチェックすることで、調剤者の思いこみや誤認を発見する機会となります。調剤監査の実施を徹底しましょう。
規格が複数種類ある薬剤や、名称が似ていて間違いやすい薬剤はあらかじめそのことが分かっていると、その薬剤を扱う際に意識的に注意を向けることができ、うっかりミスの防止に有効です。病院に紛らわしい薬剤名リストを持っていることが必要になります。思い込みや思い違いは避けられませんが、それをいかに少なくするか、思い違いが起こったときにそれを第三者がいかにチェックするか、病院でもフェイルセーフの思想の導入が必要です。

● 患者参加の問題
薬をもらう患者も医療安全対策の重要な構成員です。患者が薬に対して正確な情報を持っていれば、薬の間違えを窓口で発見できる可能性があります。思い違いが起こったとき、うっかりミスが起こったときのフェイルセーフの方策として考慮に値すると思います。

● 略号による記載の問題
処方中に疑わしい点があれば必ず医師に確認しましょう。自己判断で調剤しないことが一番大切です。医師の側では、処方箋の記載を誰が見ても判断がつくよう、紛らわしい表現を避けることや、用法・用量を明示することなどがこういったミスを防ぐのに有効です。特に病院で扱っている医薬品が1規格のみである場合でも、複数規格が存在する医薬品については規格まで記載することが必要です。オーダリングで間違えやすい薬剤については、警告が表示されるソフトもありますが、院内の採用薬の一覧をブックレットにして診療室や病棟に置くなど、薬品名等を参照しやすい環境を整備していくことも大切です。紛らわしい名称の改善については製薬企業に積極的に要望を出すことも必要でしょう。また、処方箋の記載方法の標準化を進めることも重要です。

 
 
 

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