「院内感染対策お悩み相談室」について

ここでは、これまでのグループワークで、参加者から多く寄せられた苦慮事例や担当者として困っている事などを紹介しています。ただちに問題の解決につながるようなものとは限りませんが、グループワークの際に、各指導員から助言された内容も合わせて紹介していますので、参考にしていただき、皆さんの役に少しでも立てば幸いです。

自院の感染対策についてお困りのことなどございましたら、お問い合わせフォームよりご連絡ください。

苦慮事例一覧

  • 苦慮事例1他業務と兼任で感染管理を担当する際の効率的な方法について

    苦慮事例1他業務と兼任で感染管理を担当する際の効率的な方法について

    病棟業務と兼任で院内感染対策の担当をしています。院内感染対策の重要性はわかっているのですが、どうしても時間的に余裕がなく十分な対策ができません。病棟業務を行いながら、院内感染対策を効率的・効果的に行うには、どうしたら良いでしょうか。

    アドバイス

    病棟業務等と兼任で時間的余裕がないという担当者の方は、特に中小規模の病院に共通して見られる問題かと思います。

    時間のない中で効果的な院内感染対策を行うといった点については、まず日々の業務において標準予防策や接触予防策をしっかり行っていくということに着眼して取り組まれてはいかがでしょうか。標準予防策が徹底されるだけでも、院内感染対策としては十分な効果が期待できます。無理をして多くのことに取り組むよりは、まず基本を徹底するということに重点を置いた院内感染対策を行ってみると良いと思います。

    また、専門的なことを調べる場合は、院内の他職種の方と連携を図った上で組織として対応をすることが重要です。
    地域ネットワークのつながり(地域の他病院担当者との相互協力体制)を活用するという方法も良いかと思います。

  • 苦慮事例2手指衛生遵守率の維持について

    苦慮事例2手指衛生遵守率の維持について

    手指衛生などを指導しても、すぐに遵守率が下がってしまいます。スタッフの意識を向上させるには、どうしたら良いのでしょうか。

    アドバイス

    この問題は、病院の大小に関わらず、どのような病院でも同じような悩みを抱えているのではないかと思います。そして、この問題については、院内ラウンドやポスター掲示などを利用して、繰り返し何度も指導をするということに尽きると思います。いわゆる大学病院と呼ばれる病院でさえも、地道な取り組みを日々積み重ねています。

    そのうえで、以下のような取り組みを紹介したいと思いますので、参考にしてください。

    1. アルコール消毒剤の使用状況(払い出し量等)を各部署別にグラフ化し、スタッフ用掲示板へ掲示したり、結果を院内感染対策委員会へ報告する。
    2. オムツ交換や吸引の手順書をベッドサイドに掲示する。
    3. 手洗いキャンペーン週間を定期的に設ける。
    4. 手洗いチェッカーなどの教育ツールを利用した実践的な研修の実施。
    5. 出勤時にパームスタンプチェックを実施。
    6. 手荒れ対策用のスキンケア商品を紹介又は配布。
    7. 手洗い励行ポスターを、インターネットを利用して積極的に入手して掲示する。
    8. 院内ラウンドの結果を現場へフィードバックする際、手洗い等が良くてきていた部署についても周知する。
    9. リンクナースがいる病院は、リンクナースを育てて活用する。

  • 苦慮事例3効率的な院内ラウンドの方法について

    苦慮事例3効率的な院内ラウンドの方法について

    当院にはICTがないので、院内感染対策委員会のメンバーが院内ラウンドを行っています。しかし、みんな業務が忙しいため、なかなか院内ラウンドを実施できません。あまり時間をかけずに実施できる効果的な院内ラウンドの方法を教えてください。

    アドバイス

    短い時間で効率的・効果的な院内ラウンドを行うには、事前にチェック表を作成し、項目を絞って行うと良いと思います。チェック項目の作成にあたっては、東京都福祉保健局「院内感染対策マニュアル2010年版」内にあるチェックリスト等が参考になると思います。

    なお、院内ラウンドを行った場合は、結果をどのように使うかということが重要になってきます。現場で確認した事実については、その背景も踏まえて、委員会等で改善策を検討してみてください。また、現場へのフィードバックには、デジカメを利用するなどして、よく出来ていた点なども返していくと、スタッフのモチベーション向上に効果が期待できると思います。逆に、院内ラウンドを行う目的が「現場でチェックして、その場で指摘する」ということだけに終始してしまうと、ラウンドされる側は嫌になってしまい、ラウンドする側も言いにくくなってしまい上手く機能しなくなってしまうことがあります。そのため、ラウンドを実施する時には、現場の状況を確認して、現場へ配慮した上で、結果をどのようにフィードバックするかということを考えて実施できれば、より効果的なものになるのではないでしょうか。

  • 苦慮事例4研修参加率の向上について

    苦慮事例4研修参加率の向上について

    院内感染対策担当者として、毎年2回の研修を企画していますが、研修に参加する人は毎回決まっていて、なかなか受講率も上がりません。どのような工夫をすれば、多くのスタッフが参加してくれるのでしょうか。

    アドバイス

    研修を行っても、特に中小規模の病院等では、参加するのはいつも決まったメンバーだけというのは良く聞く話ですが、各病院によって、いろいろな工夫がされています。実際に行って効果があったという取り組みについて、その一部を紹介したいと思いますので、自院でもできそうなことがあったら、取り組んでみてください。

    1. スタッフから研修の希望日時についてアンケートを取り、希望の多かった日時の順に複数回にわたって研修を開催する。
    2. 手洗いの効果が目で見える機器(手洗い教育用ツール)を利用して、実習形式の研修を行う。(保健所や業者によっては機器をレンタルしてくれる所があるそうです。)
    3. お昼休みの時間を利用したランチョン・ミーティング形式の研修を行う。
    4. 研修開催のポスターに「何のために研修を行うのか」ということ(研修目的)を、わかりやすく記載してアピールする。
    5. 病院内で話題になったことや、社会的なトピックスをテーマに選ぶ。難しいテーマより、実際に現場のスタッフが困っていること(現場のニーズ)をテーマにする。
    6. 地域の中核病院のICN(感染管理認定看護師)等に講義を依頼する。
    7. 研修の参加率を部署別に集計し、各部署の所属長が集まる会議の場などにおいて結果を提示する。
    8. 欠席者には、後日DVD視聴とレポート提出を義務付ける。(レポートを出すのが嫌で出席が増える。)
    9. 恒常的に欠席しているスタッフへは、院長や所属長に対して業務の調整を依頼(相談)する。

  • 苦慮事例5研修内容に関する工夫

    苦慮事例5研修内容に関する工夫

    院内研修の内容がいつも同じような内容になってしまいます。中小規模の病院の場合、どのような内容の研修を行うと効果のある研修になるのでしょうか。

    アドバイス

    手洗いなどの研修は、同じ内容の研修であったとしても、繰り返し何度も実施することで定着化につながり、標準予防策の徹底が図られれば、効果的な院内感染対策の一つとなります。

    ただし、毎回同じような講師と資料で講義を行っても、参加者の意識定着にはなかなかつながらないと思いますので、できれば手洗い用の教育ツール等を利用して、実践的な研修を行うと学習効果の高い研修になると思います。教育ツールを利用した研修が繰り返されたとしても、結果が目に見えるということは個々人の印象に残りやすく、その時だけ一生懸命手洗いをしたとしても、普段から同レベルの手洗いが実践できているかという質問を投げかけて、効果的に意識を啓発するということができると思います。

    毎回、標準予防策の徹底をテーマに取り上げても良いと思いますので、上記のような教育ツールを利用したり、講義を行う場合には、地域の中核病院のICN(感染管理認定看護師)等に講師を依頼するなどして、スタッフの印象に残りやすいような内容を企画すると良いのではないでしょうか。

    その他の取り組みとして、院内ラウンドを行った結果や、委員会での決定事項等を、改めてスタッフへ周知する機会として研修の場を利用したり、研修に参加できなかったスタッフのために職員食堂や会議室等で、上映会形式の研修を行う等の工夫をしている病院もありますので参考にしてください。

  • 苦慮事例6感染対策について、多職種への浸透を図る方法

    苦慮事例6感染対策について、多職種への浸透を図る方法

    当院には、看護助手や委託会社の清掃員など多職種が多く従事しているため、なかなか統一した対策が実施できません。多職種のスタッフまで、統一した対策を実施してもらうにはどうしたら良いでしょうか。

    アドバイス

    看護助手の方や委託会社の清掃スタッフ等、職種によっては専門的な教育を受けていない方も多いので、医療職と同様の理解を得るには苦慮されていると思います。そこでまず、自院のマニュアルが他職種の方にも理解しやすい内容になっているかどうかという点を確認してみるのはいかがでしょうか。例えば、他職種の方にもわかりやすくするために、写真付きのマニュアルを作成したところ、病院全体で手順等が統一できたということもありますので、マニュアルを見直すということも良いかと思います。

    その他に、委員会の場に看護助手の方や清掃スタッフの代表者に参加してもらったり、オムツ交換のマニュアル作りの場等に、看護助手の方に参加してもらうということも良いと思います。

  • 苦慮事例7他職種への働きかけについて

    苦慮事例7他職種への働きかけについて

    マニュアルを守ってくれない医師がいて困っています。このような医師に対しては、どのような働きかけをすれば良いのでしょうか。

    アドバイス

    医師に対しては、看護師等からなかなか強く言えないという病院も多いかと思います。

    もちろん、院内感染対策担当者として一定の権限を与えられているスタッフの方には、相手が医師であってもルールを守ってもらうよう指導することが必要かと思いますが、どうしても難しいという場合は、やはり医師に対しては同じ医師の立場から働きかけをしてもらうのが良いのではないかと思います。

    特に、院長先生や副院長先生など病院幹部の方から働きかけてもらうことが最も効果的なようです。また、まず看護部門からマニュアル遵守を徹底させていくことによって(周りがみんなやっているという状況を作ることによって)、間接的に医師にマニュアル遵守を促すという方法や、当該医師を委員会の委員や院内ラウンドを行うメンバーに加えるという方法をとっている病院もありますので、参考にしてください。